墨田区初の大学として、2020年に開校したiU情報経営イノベーション専門職大学。2022年6月にLUUPのポートを設置し、学生や教職員や地域の方々の交通の足としてLUUPが活用されています。
ポートを設置することになった経緯や、ライフスタイルの変化、今後の展望などについて、iUの阿部川久広教授と、同校の学生である米山慶太さん(4年)、植野愛菜さん(3年)、そして株式会社Luupの池田ひな乃に話を聞きました。
Index
- 利便性の向上と社会課題の解決のために、LUUPのポートを設置
- 「行きはLUUPで、帰りは歩いて」行動範囲と選択肢が広がった
- LUUPで生まれる「ゆるやかな連帯感」
利便性の向上と社会課題の解決のために、LUUPのポートを設置
iU情報経営イノベーション専門職大学とは、どのような大学なのでしょうか。
阿部川久広さん(以下、阿部川):一言で言うなら「起業家や、イノベーションを起こせる人財を育てる大学」です。ビジネス・ICT・グローバルコミュニケーションの3つの柱のもと、イノベーションあふれる人材育成を目指し、2020年4月に開学しました。連携企業500社以上、客員教員700名以上を有しており、各業界のプロフェッショナルが揃うこともiUの強みのひとつです。
iUには、2022年6月にLUUPのポートが設置されています。ポート設置に至った背景についてお聞かせください。
阿部川:2つあります。ひとつは、移動の課題解決です。この墨田キャンパスは、学生の利用者が多い押上駅や曳舟駅から、徒歩15分ほどかかる場所に位置します。バスもあり、歩けなくもないが少し遠い……という距離なんですね。大学としても移動の利便性を提供したいという思いがありました。
米山慶太さん(以下、米山):僕も以前からTwitterで「ポートがほしい」とつぶやいていましたね。他の場所でLUUPの良さを体験して、これがうちの大学にあったらな……と思っていました。
阿部川:もうひとつは、これが主眼ですが、研究課題の推進です。iUで取り組んでいる研究テーマのひとつに、MX(mobility transformation)という社会インフラに関するものがあります。その実証や実装に、LUUPのデータが活用できないかと考えました。
MXとは、どのようなことを研究されるのでしょうか。
阿部川:自動車をはじめとしたモビリティ分野には、さまざまな課題があります。たとえば、バスがない地域では高齢者の移動が制限され、公共施設などへのアクセスが難しいという問題がある。こうした状況で、なにか新しい交通手段が考えられないか……というのが、MXの研究テーマのひとつになります。
その「新しい交通手段」のひとつに、LUUPが当てはまるのではないかと?
阿部川:そうですね。iUは起業家を育てる大学ですので、社会的な意義のある活動に対し、実際に学生たちが実証・実装していくことを特徴としています。これはMXの推進についても同様です。
そうしたなかで、私どもの学長(中村伊知哉氏)がLuup社の岡井社長にお会いする機会があり、その旨をお話ししたところ、iUにポートを設置する運びになりました。
池田:当時はまだこの辺りのエリアに展開していなかったので、iUさんが最初のポートになったんです。実際にポートを設置したときは、阿部川先生をはじめ、ゼミの学生の方々にも立ち会っていただきましたよね。
阿部川:そうでしたね。私も「どうやってやるんですか?」と聞きながら、ポートを設置するエリアにテープを貼ったりしていました(笑)。
「行きはLUUPで、帰りは歩いて」行動範囲と選択肢が広がった
LUUPのポートが設置されたことで、iUの皆さんにはどんな変化がありましたか?
植野愛菜さん(以下、植野):電車や徒歩では講義に間に合いそうにないときに、LUUPを使っています。電車だと遠回りになるような場所からでも、最短距離で移動できるのはやっぱり便利ですよね。
阿部川:行きはLUUPに乗ってきて、帰りは友だちとおしゃべりしながら歩いて帰る、という学生もよく見ますね。その代わりと言ってはなんですが、教職員が帰宅時にLUUPを使うことも多いですよ。私も帰りはLUUPに乗って、温泉に寄ってから帰っています。
米山:僕もサウナが趣味なので、都内のサウナを巡るのにLUUPを使っていますよ。銭湯は駅前から離れたところに多いので、歩いて巡るのは意外と大変なんですよね。
植野:私は散歩が趣味なんですけど、片道で歩き疲れちゃったときにLUUPで帰ったりしています。この前も蔵前まで歩いて、帰りはLUUPにしました。
LUUPのポートが設置されたことで、行動範囲は広がりましたか?
米山:広がりましたね。電車やバスに比べると、移動に対するハードルが下がっていると感じます。
阿部川:墨田キャンパスから秋葉原ぐらいまでなら、みんな平気で行きますしね。
池田:データで見ると、墨田キャンパスからの行き先で圧倒的に多いのはスカイツリー(押上)ですね。あとは、学生さんが多く住まれている錦糸町や両国、遠いところでは東京駅や日本橋まで行かれている方もいらっしゃいます。
米山:そうなんですね。LUUPが好きな教授は、電車で行った場合の料金と、LUUPを使った場合の料金を比べて、「どこまでならLUUPのほうが得か」を解析しています(笑)。
阿部川:そういうデータがあれば、「ここにポートを置いたらいい」ということも分かるかもしれない。
先ほど研究へのデータ活用の話がありましたが、ポート設置後はiUとLuupのあいだでどのような連携が行われているのでしょうか。
阿部川:池田さんからいただいたLUUPの移動データを元に、私のゼミで主に戦略的な分析を行っています。新たなポートをどこにいくつ設置するか、新たなユーザをどうやって開拓するかなどを、学生が中心になって分析しているんです。
池田:学生の方から候補地を紹介いただいて、実際に設置に至った例もありますね。
阿部川:Luupさんと一緒に活動した例ですと、電動キックボードの安全講習会もそうですね。もともと、Luupさんがスカイツリーで安全講習会をされていたので、だったらそれを学生たちにやってもらおうと。Luupさんにご相談したところ「ぜひ」とのことで、学園祭などのイベント時に試乗会プラス安全講習会を開きました。
池田:もう4回くらい実施されていますよね?
阿部川:毎回、100人くらい集まるんです。もはやうちの学生たちのほうが、Luupさんより説明がうまくなってるかもしれません(笑)。
LUUPで生まれる「ゆるやかな連帯感」
墨田キャンパスのポートは、学校関係者以外にも開放されているのでしょうか?
阿部川:はい。もともと、このキャンパス自体がオープンに作られているんですね。敷地を区切る壁や柵はなく、誰でも自由に入っていただいて構わないので、晴れた日には広場を近隣の保育園児たちが散歩していたりするんです。LUUPのポートも地域の方々に利用されていて、スーツ姿の方やOLの方が通勤に使われているのをよくお見かけします。ある意味、地域貢献にもつながっているのかと。
なるほど。ポートが増えていけば、「新しい交通手段」として貢献度がより深まりそうですね。
阿部川:そうですね。なにより、私自身もLUUPの利用者が増えるのが嬉しいんです。街でLUUPに乗っている人を見かけると、「いいですよね!」という感じで、ニヤニヤしてしまって。地域貢献はもちろん、利用者同士でゆるやかな連帯感が生まれることに、心地良さを感じているところです。
最後に、今後の展望や取り組みたいことについて聞かせてください。
池田:直近では、さらにポートを増やしていきます。押上や錦糸町、両国など、どんどんポートを増やしてはいるのですが、まだまだ空白地帯もあるのが現状です。学生の皆さんの力も借りて、もっと充実させていきたいですね。
米山:最近は利用者が増えたせいか、朝はiUのポートがすぐいっぱいになってしまうんです。ぜひこちらも増やしていただけると……。
池田:わかりました(笑)。
阿部川先生はいかがですか?
阿部川:iUのように、最寄り駅から最終目的地までの「ラストワンマイル」の移動手段に困っている地域は、他にもたくさんあるはずです。高齢化社会を迎えている今、交通の便というバリアに阻まれる人も増えていくでしょう。こうした課題に対し、実証実験などを通じて、新たな施策を提供できる仕組みを作れたらと考えています。
また、Luupさんの“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”というミッションに、大学としても何かお手伝いができたらいいですね。将来的には、三輪車や四輪車のLUUPが登場してもいいでしょうし、「空飛ぶLUUP」みたいなものができてもいい。空を飛ぶなんて今は夢物語ですが、もしこれが解決策となる未来が来るのであれば、ぜひ検討させてもらえたらと思います。
※所属や学年などは取材時(2023年4月)のものです
取材・文=井上マサキ
取材させていただいた方
iU情報経営イノベーション専門職大学 教授
阿部川久広さん
iU情報経営イノベーション専門職大学 4年
米山慶太さん
iU情報経営イノベーション専門職大学 3年
植野愛菜さん
株式会社Luup 事業推進部
池田ひな乃